ライフワークバランスが重視される昨今、プライベートとの両立がしやすい自宅サロンの開業の人気が高まっています。そんな自宅サロンを運営する上で、経費の管理はとても重要な課題です。自宅サロンの運営に必要な費用の多くは、経費として計上できるため、しっかりと管理しましょう。
そこで今回は、自宅サロンで経費になるものをご紹介します。経費にできないものや、自宅サロンの経費を計上する上で欠かせない家事按分の方法なども解説します。
自宅サロンの運営にかかる費用は経費にできる!
自宅サロンを運営する上で、家賃や設備、備品の購入時用など、さまざまな支出が発生します。
これらの自宅サロン運営のために必要な支出は、原則として経費となります。
経費を適切に計上することで、自宅サロンの収支をしっかりと把握できるだけでなく、確定申告の作業もスムーズになりますので、忘れずに行いましょう。
自宅サロンの経費を計算する時は「家事按分」で
自宅サロンオーナーが経費を考える際、「家事按分(かじあんぶん)」についての知識が必要不可欠です。
自宅でサロンを営んでいる人は、家賃や水道光熱費のように、プライベートでも仕事でも使用している項目があるはず。一部でもプライベートに使用しているものは、すべて経費にすることはできません。
プライベート・自宅サロンの両方で使用しているものは、自宅サロンに使用している割合(家事按分)によってサロンに使っている分だけ経費にできます。
「経費はいっぱい欲しいから家事按分は9割にしちゃお!」という考えはNG。家事按分は合理的な計算によって導き出す必要があります。
家事按分は、使用している面積もしくは使用している時間で計算する方法が一般的です。
自宅サロンで経費にできるもの一覧
それでは、どのようなものが経費になるのかを以下でご紹介します。
家賃
自宅サロンが賃貸の場合、家賃の一部を経費として計算できます。
自宅サロンの場合、家賃の家事按分の計算は面積で行うことが一般的です。
実際に自宅サロンの経費を計算してみましょう。
- 自宅サロンに使用している専用の部屋の面積:20㎡
- 自宅全体の面積:80㎡
- 家賃:6万円
の場合、6万円×(20㎡÷80㎡)=1.5万円を経費にできます。
自宅サロンが分譲マンションの場合、住宅ローンは経費にすることはできません。住宅ローンにかかる利息の一部は経費にできるので、上記の面積での計算方法を試してみてはいかがでしょうか。
電気代
自宅サロンで電気を使用する場合、電気代の一部を経費にできます。
電気代は、面積で計算する方法と使用時間で計算する方法が一般的です。
電気代を面積で計算する方法をご紹介します。
- 自宅サロンに使用している専用の部屋の面積:20㎡
- 自宅全体の面積:80㎡
- 電気代:1万円
の場合、1万円×(20㎡÷80㎡)=2500円を経費にできます。
面積で計算する方法は、家族がいる場合におすすめです。家族が電気を使用している時間を計算することは難しく、面積で計算するほうが楽に計算できます。
電気代を使用時間で計算してみましょう。
- 自宅サロンで1日8時間働いている
- 睡眠時間は1日8時間(電気は使用していない)
- 電気を使用している時間は16時間
- 電気代:1万円
の場合、1万円×(8時間÷16時間)=5000円を経費にできます。使用時間で計算する方法は、一人暮らしの人におすすめです。
水道代
自宅サロンの施術で使用したタオルの洗濯や、お客様のトイレなどにかかる水道代も経費にすることが可能です。
水道代の計算はサロンの使用時間で計算されることが一般的です。
- 自宅サロンで1日8時間働いている
- 水道代:6000円
の場合、6000円×(8時間÷24時間)=2000円を経費にできます。
一方で、自分が飲む水やトイレにかかる水道代を経費にすることは難しいとされています。事業とは関係なく、プライベートで使用していると判断される可能性が高いです。
自分だけでは判断が難しいと感じた場合は、税務署や税理士に相談するほうが賢明です。
通信費
自宅サロンの仕事に関係のある電話代、Wi-Fi代などの通信費も経費にすることが可能です。また、予約管理・顧客管理アプリなどにかかる費用も通信費です。
通信費の按分計算は、一般的に使用時間を使って計算します。
- 固定電話の総使用時間:8時間
- サロンの予約・お客様からの問い合わせなどで使用した時間:4時間
- 固定電話の通信費:6000円
の場合、6000円×(4時間÷8時間)=3000円を経費にできます。
通話時間を調べることを億劫に感じる人は、自宅サロン専用の固定電話や携帯電話を契約することもおすすめです。
広告費
自宅サロンの集客にかかる費用は、全額経費にできます。
たとえば、
- ホームページ作成のサーバ代
- ドメイン代
- ホームページ作成を外注した費用
- チラシのデザインを外注した費用
など、自宅サロン宣伝のために使用した費用はすべて経費にすることが可能です。
SNSを使用して無料で自宅サロンを宣伝する方法もあります。広告費を減らしたい人は、以下の記事を参考にしてくださいね。
関連記事:自宅サロンの集客にはインスタがおすすめな理由3つ!運用のコツや具体例も合わせてご紹介
保険料
自宅サロンのために入った保険にかかる費用は、経費にできます。
たとえば、
- 損害賠償責任保険
- 店舗休業保険
- 地震保険料の一部
- 火災保険料の一部
などは、経費として認められます。自宅サロンで問題が起きたときに対処できるように、保険に入っておくといいでしょう。
一方で、オーナーが支払う以下の保険料は経費にできません。
- 生命保険料
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
- 傷害保険料
これらの保険料は、事業とは関係のないプライベートなものとして考えられるためです。経費にはできませんが、生命保険料控除、社会保険料控除、生命保険料控除として節税できますよ。
自宅サロンの保険については、こちらの記事(自宅サロンで保険加入は必要?入っておくべき保険とその理由について徹底解説!)で詳しく解説しています。
一部の税金
一部の税金も経費にすることが可能です。税金の種類によっては経費にできないものもあるので、経費を計算するときは気をつけましょう。
以下の税金は経費にできます。
- 消費税
- 固定資産税
- 印紙税
- 登録印紙税
- 不動産取得税
自宅サロンの場合、固定資産税は按分して経費にする必要があることを覚えておきましょう。
施術に使用する消耗品
自宅サロンの施術に使用する消耗品は、すべて経費になります。
たとえば、
- タオル
- ピンセット
- くし
- スリッパ
- 消毒用アルコール
などがあります。
消耗品として経費にできるものは、耐用年数が1年未満、もしくは10万円未満のものです。
サロンで使用するベッドや椅子などの設備代
サロンで使用するベッドや椅子などの設備代は、消耗品ではなく「備品」として経費になります。
備品とは、耐用年数が1年以上かつ10万円以上のもののことをいいます。
たとえば
- ベッド
- 椅子
- パソコン
- プリンター
- お客様用の冷蔵庫
などは、備品になります。
自宅サロンで販売する商品にかかる費用
自宅サロンで販売する商品にかかる費用も、全て経費にすることが可能です。
たとえば、
- 基礎化粧品
- 化粧品
- シャンプー
- コンディショナー
- ヘアオイル
- 美顔器
などがあります。
技術研究費・交通費
資格受験やセミナーにかかる費用はすべて技術研究費と呼ばれる経費にすることが可能です。また、会場に行くためにかかった交通費や宿泊費も経費にできますよ。
会場は家から1時間程度であるのに、ホテルに宿泊した場合は経費として認められない可能性が高いです。また、高級旅館やホテルに宿泊している場合も経費として認められないことも。
経費にできるからといって、常識から外れた金額のホテルや旅館に泊まるのは避けたほうがいいでしょう。
お茶・お菓子代
お客様へのお茶・お菓子代は、もちろん経費にできます。
たとえば
- 施術前後でのお茶・お菓子代
- お客様への手土産代
- お中元・お歳暮
など、お客様にかかったものは経費でOK。ただし、余ったから自分で食べた場合は、按分する必要があるので注意してくださいね。
人件費
自宅サロンで従業員やバイトを雇っている場合、人件費を経費化できます。従業員に支払う給料だけではなく、雇用保険や健康保険、税金なども人件費です。
また、従業員が着るユニフォームや、制服にかかるクリーニング代も経費にできます。
一方で、従業員の制服がスーツの場合は要注意です。スーツはプライベートでも使用できるため、残念ながら経費にすることはできません。
雑費
雑費は、今回紹介してきた経費の種類に分類できない、細かいものを指します。例えば、以下のようなものがあります。
- お客様へ送付する書類の切手代
- 打ち合わせのためのカフェ代
- 振り込み手数料
- トイレの観葉植物代
雑費は便利な勘定科目で、「どの項目に当てはめればいいのかわからないから、とりあえず雑費にしておこう」と考える人もいるかもしれません。ただし、雑費の額が非常に多くなると、税務署から「内訳が不明な費用が多すぎる」と指摘を受ける可能性があるので、使い過ぎには注意が必要です。
自宅サロンで経費にできないもの
自宅サロンで経費にできないものは、基本的に「業務と関係のないもの」です。
たとえば、プライベートで使用する基礎化粧品は経費にできませんが、サロン販売で使用する基礎化粧品費用は経費にできます。同じものにかかる料金であっても、業務と関係があるかどうかで経費にできるかできないかが変わってくることに注意しましょう。
また、消費税や固定資産税は経費にできますが、所得税や住民税も経費にできません。税金によって経費として認められるものと認められないものがあるため、経費になるものを覚えておくといいですね。
自宅サロンで経費を削減するメリットは?
自宅サロンの運営において、経費の管理は欠かせないものです。そんな経費ですが、しっかりとできる範囲内で経費を削減することで、さまざまなメリットがあります。
例えば、経費を削減することで、単純に自宅サロンの収益性を高めることができます。無駄な支出をへらし、運営にかかるコストをおさえることで、売上に対して利益が多くなるため、利益率が上がります。
また、経費を削減することで、浮いたお金を新しい機器の導入や内装の改装など、自宅サロンのサービスの質を高めたり、新メニューを導入するための資金にすることもできます。従業員がいる場合は、従業員の待遇改善の費用にもできます。
そのため、しっかりと経費を管理して、無駄な経費は削減するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?
本記事では、自宅サロンで経費として認められるものと、認められないもの、家事按分の考え方などをご紹介しました。
「本当は経費なのに計算するの忘れていた!」となると、税金面で損をしてしまいます。確定申告よりも前に、何が経費にできるのかを調べておくといいですね。
経費にできるかどうかわからないものがある場合は、税務署や税理士に問い合わせをすることをおすすめします。本記事を参考に、自宅サロンの経費にできるものを把握し、計算を始めてみてはいかがでしょうか。
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