コロナ禍を経て、働き方が多様化してきた現代。サロンの開業形態もテナントを借りるのではなく、自宅で開業する方も増えてきています。自宅サロンの開業は、テナントを借りて開業する場合より開業資金が少なく済み、家庭と仕事の両立が可能です。
そこで今回は、自宅でサロンを開業したい方に向けて、自宅サロンを開業するメリットやデメリット、実際の開業のステップまで、詳しく解説します。
自宅サロンとは?
自宅サロンとは、美容院やエステ、ネイルサロンなどの美容関連のサービスを、自分の家で提供するお店のことを指します。
自宅サロンは、育児や介護などの理由から店舗に通うことが難しい方でも開業できるため、最近人気の開業形態となっています。
以下では、自宅サロンを開業するメリットやデメリットについて詳しく解説します。
自宅サロン開業のメリット
開業資金を安く抑えられる
一般的に、サロンを開業するとなると、テナントを借りたり、内装を整える費用で大きなお金がかかることがほとんどです。
ですが、自宅サロンで開業する場合、すでに住んでいる家の一部を使うことになるため、新しく開業場所を探したり、多額の契約金などを払って借りたりする必要がありません。
そのため、お金をあまりかけずに自分のサロンを持ちたい方にとっては、自宅サロンを開業するのは最適な方法の一つであると言えます。
固定費が安い
自宅サロンを開業するメリットとして、固定費が安く済むことが挙げられます。固定費とは、毎月必ず払わなければならない費用のことです。例えば、開業場所の家賃や電気代などのことを指します。
自宅サロンだと、テナントなどを借りる場合と比べて、毎月の家賃などが発生しないため、その分の費用を節約できます。
私生活とのバランスがとりやすい
自宅サロンを開業することのメリットの一つに、私生活と仕事のバランスを取りやすくなることが挙げられます。自宅でサロンワークを行うことができるため、家事や育児、介護などの家庭で過ごす時間と、仕事をする時間を上手に組み合わせることが可能になります。
例えば、朝は家事の合間に少しだけサロンの仕事をしたり、一方で子供が保育園に行っている間にはしっかりとサロンワークを行ったりすることができます。また、家庭内の時間や、自分自身の時間も、サロンワークの時間と合わせて柔軟に取ることができます。
通勤時間がない
自宅でサロンを開業すると、通勤する必要がなくなるため、通勤時間がなくなります。それにより、朝の忙しい時間に通勤で疲れることがなく、その分サロンオープンの準備をしたり、家事をしたりすることが可能になります。
さらに、通勤でかかる交通費も節約ができるため、経済的にも大きなメリットとなります。
自宅をきれいに保つことができる
自宅サロンを開業するということは、自宅の一部にお客様を迎えるということです。そのため、サロンとして常に清潔で整頓された環境を保つ必要があります。これは、お客様に快適に過ごしてもらうためだけでなく、サロンとしての特別な空間であるという印象を与えるためにも大切です。
結果として、自宅サロンを開業することで、自然と家全体をきれいに保つ習慣が身に付きます。掃除や片付けを日常的に行うことで、生活空間が常に快適に保たれるので、自分自身の気持ちもポジティブになりますし、家族も清潔な環境で過ごすことができます。
自宅サロン開業のデメリット
仕事と私生活の分離が難しい
自宅サロンの開業は、自宅のスペースとサロンのスペースが隣り合わせになることで、仕事の時間とプライベートの時間をきちんと分けることが難しくなる場合があります。たとえば、サロンワークをしている時間に配達などが来たり、休みの時間でも急な予約が入ってしまうなどです。
自宅サロンにおいて、仕事とプライベートの時間を上手に管理するためには、しっかりとしたルールを設けることが大切です。例として、「この時間は家族と過ごす時間」と決めたり、「仕事の予約はここまで」と区切りをつけるなどで、バランスを保つことが大切になります。
防犯対策が必要
自宅サロンでは、家族以外のさまざまなお客様を自宅に迎えることになります。そのため、防犯対策もしっかりと考えなければなりません。
例えば、サロンのスペースと私生活のスペースを物理的に分ける、防犯カメラなどのセキュリティシステムを導入する、来客時は必ずお客様本人か確認するなどの方法があります。
立地が選択できない
自宅サロンの場合、立地によってはお客様が来店しにくい場所である可能性があります。例えば、交通の便があまり良くない地域や、駐車スペースがない場所では、お客様が来店するのに不便を感じてしまいます。
この場合、なるべくわかりやすい公共交通機関を案内したり、近隣の駐車スペースをしっかりと確保するなどの工夫が必要です。
自宅サロンって違法になる?
自宅サロンは、一戸建て以外にも、マンションやアパートの一室を利用して開業する場合も多いです。
マンションやアパートで開業する際には、場合によっては以下のような法令違反になってしまう可能性がありますので注意が必要です。
- 賃貸借契約違反
- 部屋の造作・模様替え
- 建築基準法違反(居住用と事業用の物件で建築基準が若干異なる)
- 消防法上の問題(防火対象物使用開始届出書の提出)
- 消費税法上の問題(居住用と事業用の物件で消費税が異なる)
多くは、開業したい場所がサロンなどの商業用としての賃貸物件ではない場合に起こってしまうことがほとんどです。そのため、賃貸の物件で自宅サロンを開業する場合は、あらかじめ管理会社などに確認をすることが必要です。
自宅サロンが違法になってしまう場合について、詳しくは以下の記事で解説しています。
自宅サロン開業のステップ
ここからは、実際に自宅サロンを開業するステップについて詳しく解説していきます。
どんなサロンを開業するか決める
まず自宅サロンを開業する際に、どのようなサロンを開業するのか決めていきます。
サロンのコンセプトを決める
サロンのコンセプトとは、サロンがどんなお客様ににどんなサービスを行い、お客様にどんな気持ちになってもらいたいかを具体的に決めます。例えば、「普段家事で疲れている主婦の方に、プライベート空間でリラックスした時間を過ごしてもらいたい」や「環境問題や添加物などに敏感な若い世代でも満足できる、完全オーガニックな薬剤を使ったエステサロン」などです。
コンセプトをしっかりと決めることで、サロンの開業準備の際に目指すべき方向性が明確になり、準備を効率的に進めることができます。また、開業後もサロンとしての目標を見失わずにしっかりと運営していくことができます。
事業計画書を作成する
事業計画書とは、サロンを開業し運営していく上での計画を詳細に書いた書類のことです。この中には、サロンのコンセプト、予算や集客の計画、将来的にどれくらいの利益が見込めるかなどの情報が含まれています。
事業計画書の作成は義務ではありませんが、作成することで、自宅サロンを開業する際のビジネスプランが明確になる上、銀行などから資金を借りる際にも役に立つので、作成をおすすめします。
開業資金を用意する
自宅サロンを開業する際には、事前に開業資金をしっかりと準備する必要があります。
内装費用が予想よりかかったり、理想の家具が海外でしか取り扱いがなく割高になるなど、イレギュラーなことが起こる可能性がありますので、開業資金は余裕を持って用意しましょう。以下では、開業費用として用意すべき費用を細かく解説します。
開業資金の内訳
内装費用
内装費用とは、サロンの内装を整えるためにかかるお金です。たとえば、壁紙を張り替えたり、照明を設置したり、家具を購入したりする費用です。費用の目安としては、DIYを行ったり、大規模な工事を行わなければ10万円程度から可能ですが、デザインにこだわると数十万円かかる場合もあります。
設備費用
設備費用は、サロンで提供するサービスに必要な機器や道具を購入するための費用です。例えば、美容サロンならヘアドライヤーやシャンプー台、マッサージサロンならマッサージベッドやタオルウォーマーなどです。小規模なサロンであれば100万円未満で用意できますが、専門的な機器が必要な場合、さらに高額になってしまうこともあります。その場合、機器会社とリース契約をする方法もあります。
広告資金
広告資金とは、集客のため、サロンの宣伝活動に使うお金のことです。SNSの広告やチラシの作成、ウェブサイトの作成費用などが含まれます。広告は数万円から出すことが可能ですが、広告の規模によってはさらにかかることがあります。
運転資金
運転資金とは、サロンの日々の運営に必要なお金です。サロンの消耗用品や光熱費などがこれにあたります。初めの数ヶ月は収入が安定しないことを考えて、数十万円程度は準備しておくと安心です。
助成金の活用
開業資金を全額すぐに用意することが難しい場合は、助成金や補助金を使うことを視野に入れてみてください。
助成金や補助金は、多くの場合返済不要であることが多く、開業をする前にもらえるものや、開業した後に申請をしてもらえるものなど、さまざまあります。自治体独自で行なっている場合もありますので、サロンを開業する自治体の情報もチェックするのがおすすめです。
自宅サロンの中でも人気なリラクゼーションサロン開業で使える助成金は、以下の記事でもまとめております。
内装を整える
自宅サロンの開業において、内装を整えることは大変重要です。なぜなら、内装はお客様がサロンに対して持つ第一印象を大きく左右するからです。内装を整え、お客様が快適にリラックスして過ごせる空間づくりをすることで、サロンの印象が良くなり、リピーターの獲得にもつながります。
内装は、サロンのコンセプトに合わせたものにし、自宅サロンならではの生活感が出ないようにすることが大切です。
内装のポイント
色使いに注意
色は人間の心理状況に影響を与えると言われています。例えば、青や緑はリラックス効果があり、赤やオレンジなどは活気を与える効果があります。サロンの目的に合った色使いをすることで、施術の効果をさらにアップさせてくれます。
照明を工夫する
サロン内の照明は、明るすぎず、暗すぎない心地よい照明を選びましょう。施術に必要な場所は明るく、待合スペースは少し暗めに設定するなど、空間ごとに照明を調整するのがおすすめです。
家具・設備を整える
内装を整えたら、家具や設備を整えていきます。
家具や設備は、サロンのコンセプトや内装に合わせたもので揃えるのはもちろんですが、お客様が長時間過ごす椅子やベッドは、見た目だけでなく快適性も重視して選びましょう。特に施術用のベッドは、専門サイトなどからレビューをチェックしつつ選ぶのがおすすめです。
おすすめのマッサージベッドはこちらの記事でもご紹介しています。
集客を行う
自宅サロンを開業し、どんなに素晴らしいサービスや技術を持っていても、お客様がたくさん来店してくれないとサロンとして経営ができません。そのため、しっかりと集客を行う必要があります。
代表的な集客方法としては以下があります。
- チラシ配布
- ポスティング
- フリーマガジンへの掲載
- ホームページの作成
- SNS
- サロン検索サイトへの掲載
集客活動にかけることのできる予算や時間などを加味しつつ、ターゲットに合わせた最適な集客方法を探しましょう。例えば、自宅サロンの近辺に住む主婦の方がターゲットであれば、チラシを配ったり、ポスティングを行うことが効果的です。一方で、学生や社会人の若い世代がターゲットであれば、SNSやホームページでの集客が有効です。
SNSでの集客でのポイント
昨今では、サロンの集客においてSNSを使う方が増えています。集客にSNSを使うことで、自分のサロンの魅力をたくさんの人に簡単に、そしてリアルタイムで伝えることが可能です。
SNSでの集客では、以下のポイントを押さえましょう。
魅力的なコンテンツを投稿する
サロンで行なっている施術の写真や動画をアップロードすることで、お客様に具体的に施術を受けるイメージを持ってもらいやすくなります。例えば、施術前後の変化が見れるビフォーアフターの写真や、サロンの内装、使用している特別な美容機器の紹介などです。
定期的に投稿する
定期的に投稿することで、お客様が投稿を見る頻度を上げることができます。投稿をする曜日や時間を決めて、日々のルーティン化するのもおすすめです。
ハッシュタグを賢く使う
投稿に関連するハッシュタグを使うことで、より多くの人に投稿を見てもらえるようになります。例えば、#美容 #リラックス #自宅サロン など、サービスに関連したハッシュタグを効果的に利用しましょう。
集客について詳しくは、以下の記事でも解説しております。
予約システムを整える
開業の準備が進んできたら、予約システムの導入を検討しましょう。
予約システムを導入することで、お客様は24時間365日いつでも予約ができるようになるため、予約したいと思った時にいつでも予約ができるようになります。また、予約システム側が予約の空き状況などを管理してくれるので、サロン側も予約を受け付ける際にお客様とやり取りをする必要もなくなり、ダブルブッキングなどのミスも防ぐことができます。
最近では、アプリで使える予約システムの「tol」や、ホームページ作成も行える「Goope」などさまざまな予約システムがあります。他にも事前決済機能がついた予約システムや、顧客管理機能をそなえた予約システムもありますので、ご自身のサロンの欲しい機能や予算に合わせた予約システムを導入することをおすすめします。
サロンにおすすめな予約システムは以下の記事でご紹介しています。
開業届を出す
自宅サロンを開業したら、開業届を出しましょう。
開業届とは、新しく事業を始めることを税務署に届け出る書類のことを指します。通常開業して1ヶ月以内に提出することが義務となっています。提出しなかった場合の具体的な罰則は定められていないので、提出しなかったからといって罰金や処分を受けることはありません。
しかし、開業届を提出することで以下のようなメリットもありますので、忘れずに提出しましょう。
- 確定申告で青色申告ができる
- サロンの銀行口座を開設できる
- 個人事業主である証明ができる
自宅サロンの開業届については、以下の記事でも詳しく解説しています。
自宅サロン開業で起こりがちなトラブル
ここからは、自宅サロンを開業する際に起こりがちなトラブルと対処法を解説します。
近隣住民との騒音問題
自宅サロンで施術を行う際に、お客様との話し声や、サロンの機器の音などが騒音となり、近隣の方とのトラブルになる場合があります。特に、夜の遅い時間や早朝にサービスを提供する際にはより気をつけなければなりません。
対処法としては、近隣住民の方の生活リズムに合わせた営業時間を設定し、騒音が問題になりにくい時間帯に営業したり、騒音対策として壁やドアに防音材を取り付けるなどが挙げられます。また、日頃から定期的に近隣の方々とのコミュニケーションをとっておくことで、何か問題が起こった際にスムーズに対応できるようにしておくことも大切です。
駐車スペースの不足
自宅サロンの場所によっては、お客様が利用できる駐車スペースが限られている場合があります。自宅サロンの場所が住宅街にある場合は特に、お客様の車が近隣の方の家の前などに泊まってしまい、トラブルの原因となります。
対処法としては、できる限りお客様に公共交通機関での来店をお願いしたり、予約時の連絡事項としてしっかりと駐車場の案内をしていくことが大切です。可能であれば、自宅の敷地内や近くに駐車スペースをしっかりと確保できると安心です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は自宅サロンを開業したい方に向けて、開業のメリットやステップなどについて詳しく解説しました。
自宅サロンは店舗を借りる代わりに、自宅の一部を利用して仕事をするので、開業費用が少なくて済み、自分のペースで仕事ができるため、仕事と家庭生活のバランスが取りやすいです。そのため、サロンを開業したい方におすすめの開業形態の一つとなります。
この記事が自宅サロンを開業したい方の助けになれば幸いです。
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