働き方が多様化してきた現代、自宅で開業する方が増えてきています。特に美容業界では、ネイルサロンの自での開業が人気を集めています。自宅でのネイルサロン開業は、低コストで始められる、通勤時間がない、柔軟な営業時間を設定できるなど、さまざまなメリットがあります。
そこで今回は、ネイルサロンを自宅で開業したい方向けに、自宅で開業するメリットや実際の開業のステップを解説します。
ネイルサロンを自宅で開業できる?
ネイルサロンは自宅でも開業することができます。
自宅ネイルサロンと呼ばれ、自宅の部屋の一部をネイルサロン用のスペースとして営業する形態です。
以下では、自宅で開業する場合のメリットとデメリットを説明したいと思います。
ネイルサロンを自宅で開業するメリット
少ない開業資金で始められる
自宅ネイルサロンは比較的少ない開業資金で始められるのが特徴です。
自宅の一部を使うので物件やテナントを借りるのと異なり、賃貸料がかかりません。物件を借りる場合は敷金、礼金といったまとまったお金が必要になりますが、それらの心配がないのは大きなメリットです。
省スペースでもネイル道具があればサービスを提供できるので、10万円前後の少ない資金で開業することも可能です。
時間的な制約が少ない
自宅でネイルサロンを開業すると、時間的な自由度はぐっと上がります。
雇われてネイルサロンに勤務していた人であれば、通勤時間がなくなり、他のことに使えるようになります。勤務が午前10時から午後7時までというような、決められた拘束時間もなくなります。
お客様の予約時間に合わせて営業するので、予約の合間にプライベートの予定や買い物を済ませるというように、有効活用することも可能です。
子育てや介護と両立したい場合も、自宅であれば家族の近くで仕事ができますし、お迎えなどの決まった時間を空けておくこともできるようになります。
過去にネイリストとして働いた経験があり、今は別の仕事をしているという人が副業でスキマ時間を活用するために開業するというケースもあります。
自宅の設備を共有して経費にできる
自宅ネイルサロンの場合、インターネット回線や光熱費はもともと自宅で使っているものを共有することになると思います。
個人事業主として自宅でネイルサロンを開業した場合、普段の生活に使いながらネイルの営業にも使った分の費用は家事按分(かじあんぶん)という形で経費にすることができます。
生活費の一部を経費にできるということになります。
ネイルサロンを自宅で開業するデメリット
防犯対策が必要
自宅ネイルサロンでは、お客様を自宅に招いてサービスを提供します。
知らない人を家に上げることになるので、防犯には注意が必要です。施術をする部屋はできるだけ玄関に近い場所にする、ネイルサロンと自宅の入り口を分ける、施術する部屋とトイレへの導線は近くにするなど、気をつけたい部分があります。
住所を知らせて営業することになるので、お客様と家族はできるだけ顔を合わせないようにするなど配慮が必要です。そうした防犯やプライベートとの区別に気を配ることで、お客様が気をつかわずに利用できるサロン作りにもつながります。
サロンに生活感が出やすい
自宅でネイルサロンを営業すると、どうしても生活感が出てしまう場合があります。
例えば、食事の支度の匂いや家族の生活音などです。アットホームな感じを好むお客様であれば問題ありませんが、ネイルに集中してサービスを受けたいお客様にとってはマイナスポイントになってしまうこともあります。
施術の部屋の位置を考えることで、ある程度は緩和できると思いますので注意しましょう。
立地が決まっている
自宅でネイルサロンを開業する場合は、場所が決まった状況でスタートすることになります。
住宅街でわかりにくい場所にあると、集客に不利になる可能性もあります。また、場所や自宅のスペースによってはお客様用の駐車場の確保も必要になります。
駅や幹線道路に近く利便性が高いサロンと比べると、自宅ネイルサロンが集客面でデメリットになることもあります。
ネイルサロンを自宅で開業する際の注意点
自宅でネイルサロンを開業する際の注意点をいくつか紹介します。
マンションの場合は開業可能か確認が必要
自宅がマンションの場合、契約が住居専用となっているとネイルサロンとして使用することができません。
賃貸でも分譲でも開業前に管理会社などにネイルサロンとしての利用が可能かどうか確認しましょう。もし、無理だった場合は別の賃貸物件を借りるか、シェアサロンのようなスペースを借りることが選択肢となります。
防犯対策
デメリットの部分でも少し触れましたが、自宅ネイルサロンでは防犯対策はしっかり準備しておきたいところです。
施術スペースと家族の生活スペースをしっかり分けて、必要以上に個人情報を開示しないことも大切です。トイレなどお客様が共有する場所への移動の間に他の部屋が見えないようにするなど、工夫が必要です。
ホームページやSNSに自宅全体の外観がわかるような写真を載せない、サロンの住所は予約の確定後にわかるようにするなど、対策を行いましょう。
キャッシュレス決済も増えてきましたが、自宅で多めの現金を扱う場合や、より安心感を得たい場合は警備会社と契約するのも一つの手です。トラブルを予防するために、お客様に施術前に確認事項を記入した同意書にサインをしてもらうことや、時によっては予約を断ることも自分や家族を守るために必要になるかもしれません。
ネイルサロンを自宅で開業するのに資格は必要?
自宅でネイルサロンを開業する際に、特に決められた資格は必要ありません。ただ、お客様の信頼度を高めるために資格の取得は有効なので、いくつか紹介したいと思います。
JNECネイリスト技能検定
JNECネイリスト技能検定は、公益財団法人「日本ネイリスト検定試験センター(略称JNEC)」が認定している資格です。
国際的に通用するネイリストの育成を目指して、正しい技術と知識の向上を目的とした資格で、30年近い試験の実施と100万人近い受験者実績があるといいます。
1級が最高位で、1級、2級、3級の3段階に分けられています。3級はネイリストとしてネイルケアやネイルアートに関する基本的な技術や知識の修得を目的としています。
受験は飛び級はできず、3級から一つずつステップアップしていくことになります。
3級 | 基本的なサロンワークの知識と技術 |
2級 | サロンワークで通用するネイルケア、リペア、チップ&ラップ、アートに関する技術や知識 |
1級 | トップレベルのネイリストとして必要とされる総合的な技術および知識 |
ネイリストの多くは2級以上を取得していることが望ましいです。また、1級の実技試験では、キューティクルラインのスムーズさやネイルの表面の仕上がりに凹凸や気泡がないかなど、細かな点がチェックされるため、レベルの高い試験となります。
いずれの級も実技試験と筆記試験で合否が判定され、3級の合格率は約85%、2級は約43%、1級は約39%となっています。
JNAジェルネイル技能検定
JNAジェルネイル技能検定は、NPO法人「日本ネイリスト協会(略称JNA)」がネイルの正しい知識と安全な技術の確立を目指し、お客様が安心して施術を受けられる健全なジェルネイルの普及を目的に実施している検定試験です。
プロネイリストとしてサロンワークでジェルネイルを施術するのに必要な理論と技術の修得が判断されます。
上級を最上位として、中級、初級の3段階に分けられ、筆記試験と実技試験で判定されます。
試験内容 | 合格基準 | |
初級 | ネイルケアのベーシックマスターとジェルネイルを実施するために必要な基礎的知識と技術 | 筆記試験と実技試験の両方が100点満点のうち80点以上 |
中級 | ネイルケアとジェルネイルを施術するためにプロとしてサロンワークに必要な専門的知識と技術 | 筆記試験は100点満点のうち80点以上、実技試験は100点満点のうち70点以上 |
上級 | ジェルネイルのスペシャリストとして必要とされる総合的知識と技術 | 筆記試験と実技試験の両方が100点満点のうち70点以上 |
ネイルサロンを自宅で開業する際のステップ
自宅でネイルサロン開業する際の流れを簡単に説明します。
ライフラインの整備
ネイルのサービス提供に必要な電気、水道、インターネット、電話などのライフラインを整えましょう。
予約の受付にインターネットは必須なのと、予約当日にお客様の急な予定変更や到着遅れの連絡は電話の方がスムーズなので電話回線も用意した方がいいです。
携帯電話の業務用の番号を取得するなど、プライベート用と分けると安心です。
サロンのコンセプトを考える
ネイルサロンのコンセプトを考えましょう。
ターゲットとする年齢や客層をはっきりさせたうえで、施術のメニューや価格を考える必要があります。若者が好むデザインと年齢を重ねた層では選ぶデザインも異なりますし、ネイルにかける金額も変わってきます。
コンセプトが曖昧だと、お客様も選びにくいサロンとなってしまうので、ターゲットをはっきり決めてサロンの売りをアピールしましょう。
開業資金の準備
開業資金は自己資金か金融機関からの融資で準備する方法があります。
自己資金は貯蓄などで一定の額を用意して開業することになります。金額や使い道も自分で自由に決められる一方、貯めるまでには時間がかかります。
金融機関からの融資の場合、時間をそれほどかけずに開業資金を準備できるメリットがあります。ただ、審査が必要で、借りた後は毎月の返済や利子があることも考慮しなければなりません。
備品の準備
自宅でネイルサロンを営業するための備品を整えましょう。
- ネイル用のデスク
- お客様とネイリスト用の椅子
- デスク用ライト
- 手元のネイル用ライト
- 消毒用品
- ジェルやパーツなどのネイル道具
最低限これらの備品があれば営業できると思いますが、自身のサービスや必要に応じて準備しましょう。
集客の対策を考える
開業直後は集客が何よりも重要となります。集客対策はしっかりと考えましょう。
まずはお店がオープンしたこと、存在を知ってもらうことが大切です。チラシを配ったり、ポスティングをしたり、古くからある地道な方法で宣伝するのも一つの手です。
一方でインターネットでの集客対策は欠かせません。お店のホームページの制作、美容系ポータルサイトへの登録やインスタグラム、LINE、X(旧ツイッター)などのSNSを活用した集客は成功の鍵となります。
費用はかかりますが、インターネット広告や地域のフリーペーパーに広告を出すことも検討しましょう。
ネイルサロンの集客については、以下の記事で詳しく解説しています。
予約システムの導入
インターネットを利用した集客と共に、予約システムの導入も重要になります。
ネットを通じて24時間予約を受付できるようにすることや、お店のホームページやSNSと連携してスムーズに予約が完了できるシステムの利用は集客にプラスになります。
ネイリストとしても、予約の時間管理やお客様の情報の管理が手軽になるので、その分の手間を施術やプライベートの時間にあてることができるようになります。
最近はアプリを使って、より簡単に予約システムを導入できるサービスもあるので検討してみると良いでしょう。
ネイルサロンにおすすめな予約システムは、以下の記事でご紹介しています。
開業届を出す
自宅ネイルサロンの開業が決まったら、個人事業主としての開業届を出しましょう。
基本は開業から1ヵ月以内に所轄の税務署に書類を提出すれば大丈夫です。
自宅サロンでの開業届については、以下の記事で詳しく解説しています。
自宅ネイルサロンの平均月収は?
自宅でネイルサロンを開業する場合、どのくらいの収入が得られるかは気になる部分だと思います。
お客様の数次第ですが、ネイリストの月収は20万円から100万円になります。
ネイルの施術には決まった時間がかかるため、1日に施術できるお客様の人数には限界があります。1人あたり2時間の場合、8時間の営業で4人です。
仮に客単価が1万円だと、人気サロンとなって毎日予約がいっぱいの状況が続けば、1日の売り上げが4万円で月に25日営業すれば100万円になります。
しかし、予約があまり入らず、1日のお客様が1人という状況だと、月の売り上げが20数万円ということも珍しくありません。
そこからネイルの材料費などの経費を引いた額が月収となります。技術があるネイリストになれば、客単価を上げることもできて月収アップも可能だと思います。
お客様から選ばれるネイルサロンになることが大切です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自宅でネイルサロンを開業する際のメリットやデメリット、注意点などについて説明してきました。自宅サロンは比較的少ない開業資金で始められるので、チャレンジしやすい営業形態とも言えます。
時間的な自由度も高まるので、プライベートと両立したい人には向いていると思います。
ネイリストとしての腕を生かして、人気のサロン作りを目指してください。
この記事が自宅ネイルサロンを開業する方の一助になれば幸いです。
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