レンタルスペース、貸し会議室、撮影スタジオ、シェアサロン。
空間をシェアするビジネスは、副業や個人事業としての人気が高まっています。
しかし、オーナー様を悩ませるのは日々の「管理業務」です。
「電話やメールでの日程調整が面倒」「ダブルブッキングをしてしまった」「鍵の受け渡しのために現地に行くのが大変」「利用料の未収が発生した」。
一方で、企業の総務・バックオフィス担当の方であれば、「社内会議室の予約が重複する」「予約されているのに誰も使っていない(カラ予約)」「特定の部署が部屋を独占している」といった、社内リソースの最適化に関する悩みを抱えていることでしょう。
これらの課題を解決するのが「予約システム」です。
この記事では、あなたの目的に合致する最適な予約システムを厳選して紹介します。
特に、「無料で始めたい」「スマートロックと連携して無人運営したい」「スマホだけで管理したい」というニーズに応えるツールを中心に、メリットだけでなくデメリットも含めて徹底的に比較・解説します。
目次
会議室・レンタルスペース運営に「予約システム」が不可欠な理由

スペース運営において、予約システムは単なる「受付フォーム」ではありません。
それは、あなたの代わりに24時間365日働き、集客から決済、鍵の受け渡しまでを行う「優秀な管理人」です。
「無人運営」の実現と人件費の削減
レンタルスペース運営の最大のメリットは、スタッフを常駐させずに収益を上げる「無人運営」が可能である点です。
しかし、予約が入るたびに鍵を開けに行ったり、現地で集金していたりしては、そのメリットを享受できません。
予約システムと「事前決済機能」、そして後述する「スマートロック」や「キーボックス」を組み合わせることで、予約・決済・入室案内までを完全自動化できます。
これにより、オーナーは現地に行くことなく、副業として、あるいは遠隔地からでもスペース運営が可能になります。
ポータルサイトとの「ダブルブッキング」を完全防止
これがスペース運営者にとって最大の課題です。
多くのオーナー様は「インスタベース」や「スペースマーケット」といった集客用ポータルサイトにも掲載しています。
しかし、自社サイトとポータルサイトで同時に予約が入ってしまったら?
予約システムの中には、Googleカレンダーなどを介してポータルサイトの予約状況(在庫)と自動連携(iCal連携)できるものがあります。
これこそが、予約システムを導入すべき最大の技術的メリットです。
手動でカレンダーをブロックする手間とミスから解放されます。
「事前決済」によるドタキャン・未払いリスクの回避
場所を提供するビジネスにおいて、当日の無断キャンセル(ドタキャン)や、利用後の料金未払いは大きな痛手です。
予約システムで「クレジットカード事前決済」を必須にすることで、これらの金銭的リスクをほぼゼロにできます。
また、領収書の発行や請求書の送付といった経理業務も自動化されるため、事務作業の負担も劇的に軽減されます。
【社内利用】「カラ予約」の防止と会議室の有効活用
企業内で会議室予約システムを導入する最大のメリットは、「カラ予約(幽霊予約)」の撲滅です。
「とりあえず予約しておこう」と確保された会議室が、実際には使われないまま放置される。
これはオフィスコストの無駄です。
予約システムの中には、入室確認(チェックイン)がない場合に自動で予約を取り消し、空き部屋として再開放する機能を持つものもあります。
これにより、本当に必要な会議のためにスペースを有効活用できるようになります。
失敗しない選び方!運営規模に合わせた5つの比較ポイント

数ある予約システムの中から、自社に最適なものを選ぶための5つの基準を解説します。
1. 「社内管理用」か「外部貸し出し用(商用)」か
ここが最大の分岐点です。
目的を間違えると、全く使い物になりません。
外部貸し出し用(ビジネス・副業)
不特定多数の「お客様」が予約します。
会員登録不要での予約、クレジットカード決済、キャンセル料徴収、見やすい予約ページ、集客機能が必要です。(例:freee予約、RESERVA、upnowなど)
社内管理用(総務・バックオフィス)
社内の「従業員」が予約します。
社員アカウント連携(SSO)、承認フロー、部署ごとの権限設定、部屋前のタブレット表示機能が必要です。(例:Googleカレンダー、サイボウズ、AirReserveなど)
本記事では、主に前者の「外部貸し出し用」を中心に解説しますが、小規模な社内管理にも応用できる無料ツールも紹介します。
2. 「Googleカレンダー連携(双方向)」は可能か
レンタルスペース運営において、Googleカレンダー連携は「命綱」です。
なぜなら、インスタベースなどのポータルサイトもGoogleカレンダーと連携しているからです。
「予約システム ⇔ Googleカレンダー ⇔ ポータルサイト」という連携が組めれば、どこで予約が入っても全てのカレンダーが自動で埋まり、ダブルブッキングを防げます。
必ず「双方向連携(読み込み・書き込み両方)」ができるシステムを選びましょう。
3. 「スマートロック」との連携機能はあるか
本格的な無人運営を目指すなら、スマートロック(RemoteLOCK、Akerunなど)とのAPI連携機能は要チェックです。
予約確定と同時に「その時間だけ使える暗証番号」が自動発行されれば、鍵の受け渡し業務が完全に不要になります。
ただし、API連携機能は「月額費用が高くなる」傾向があるため、初期は「キーボックスの暗証番号を自動メールで送る」という運用(freee予約などで可能)から始めるのも賢い選択です。
4. 「事前決済」と「キャンセル料徴収」機能
ビジネスとして運営する場合、決済機能は必須です。
特に「キャンセル料の自動徴収」機能があるかは重要です。
「3日前までは無料、前日は50%」といったキャンセルポリシーを設定し、システムが自動で計算・決済してくれる機能があれば、キャンセル対応のトラブルやストレスから解放されます。
5. ランニングコスト(無料プランの有無)
スペース運営は家賃などの固定費がかかるため、システムの利用料は極力抑えたいところです。
初期費用0円、月額固定費0円で、予約が入った時だけ決済手数料がかかる「成果報酬型」のプランや、機能制限付きの「無料プラン」があるシステムからスモールスタートすることをおすすめします。
【無料あり】レンタルスペース・貸し会議室におすすめの予約システム7選
前述の基準に基づき、特におすすめの予約システムを7つ厳選しました。
まずは比較表で全体像を確認しましょう。
なお、レンタルスペース特化型に限らず、全業種対応のシステムを含めて幅広く検討したい方や、とにかくコスト重視で探したい方は、以下の比較記事も併せてご覧ください。
レンタルスペース向け予約システム比較表
1. freee予約(旧tol):スマホ完結・個人オーナーの決定版
freee予約(旧tol)は、スマホやタブレットのアプリだけで予約サイト作成から管理まで完結する、個人事業主・スモールビジネス特化型のシステムです。
最大の強みは「手軽さ」と「無料範囲の広さ」。無料プランでも予約件数無制限で、事前決済機能も利用可能です。
さらに、Googleカレンダーとの双方向連携が無料プランで使える数少ないシステムであり、ポータルサイトとの併用運用(在庫連動)をコストゼロで実現できます。
スマートロックのAPI連携はありませんが、予約確定メールに「キーボックスの暗証番号」を記載することで、実質的な無人運営が可能です。
- メリット: アプリ完結、Gカレンダー双方向連携が無料、事前決済対応
- デメリット: スマートロックAPI連携なし
- おすすめ: 個人オーナー、副業運営、ポータルサイトと併用したい方
2. RESERVA(レゼルバ):スマートロック連携に強い多機能型

RESERVAは、登録事業者数26万社を超える国内最大級の予約システムです。
その特徴は「機能の豊富さ」と「拡張性」です。
特に「RemoteLOCK」や「Akerun」といった主要なスマートロックとの自動連携機能(有料オプション)が充実しており、予約ごとのPINコード自動発行など、高度な無人化が可能です。
本格的な貸し会議室ビジネスを展開する企業に適しています。
- メリット: スマートロック連携が強力、多言語対応、予約タイプが豊富
- デメリット: 無料プランでは機能制限が多い(Gカレンダー連携など)
- おすすめ: 本格的な無人運営システムを構築したい方、複数店舗を管理したい方
引用:RESERVA
3. upnow(アップナウ):レンタルスペース特化型システム

upnowは、レンタルスペースや貸し会議室の運営に特化して開発された予約システムです。
ポータルサイト(スペースマーケット等)と同様の使い勝手を自社サイトとして持てるのが特徴です。
Googleカレンダーとの双方向同期が強力で、ポータルサイトとの「在庫連動」がスムーズに行えます。
初期費用・月額費用が無料で、売上手数料のみで利用できるため、リスクを抑えて導入できます。
- メリット: レンタルスペース特化、初期・月額無料、スマートロック連携
- デメリット: 決済手数料がやや高め(システム利用料含む)
- おすすめ: レンタルスペース特化の機能が欲しい方、固定費をかけたくない方
引用:upnow
4. STORES 予約:回数券や会員制スペースに

STORES 予約は、ネットショップ作成サービス「STORES」系列の予約システムです。
回数券や月謝の管理に強く、コワーキングスペースや会員制自習室のような「継続課金」モデルの運営に適しています。
Zoom連携機能もあるため、オンライン会議室の貸し出しなどにも応用できます。
また、LINE公式アカウントを使った予約管理や自動通知に興味がある方は、LINE連携に強いシステムをまとめた「LINE 予約システム 無料」の記事も参考にしてみてください。
- メリット: 回数券・月謝管理、Zoom連携、LINE連携
- デメリット: Googleカレンダー連携は有料プランから
- おすすめ: 会員制スペース、コワーキングスペース、月謝制を導入したい方
引用:STORES 予約
5. AirReserve(エアリザーブ):社内管理や電話予約併用に

AirReserveは、リクルートが提供するシンプルな予約システムです。
「自由受付タイプ(都度予約)」と「事前設定タイプ(枠予約)」が選べます。
カレンダー画面がシンプルで見やすく、社内会議室の管理や、電話予約をスタッフが手入力して管理するスタイルに向いています。
ただし、オンライン決済は有料オプションとなる点に注意が必要です。
- メリット: リクルートIDで利用可、画面がシンプルで見やすい
- デメリット: オンライン決済が有料、他システム連携が弱め
- おすすめ: 社内会議室の管理、電話予約メインの貸し会議室
引用:AirReserve
6. SelectType:ホームページ一体型の高カスタマイズ性

SelectTypeは、予約システム付きのホームページを簡単に作成できるサービスです。
デザインのテンプレートが豊富で、写真映えするおしゃれなレンタルスペースのサイトを作りたい場合に適しています。
備品(プロジェクターなど)のオプション貸し出し管理なども細かく設定できます。
もし、WordPressを使って自社サイトを構築し、そこに予約機能を埋め込みたいと考えている場合は、「WordPress 予約システム」の記事で、プラグインや埋め込みツールの選び方を詳しく解説しています。
- メリット: 高度なデザインカスタマイズ、HP作成機能
- デメリット: 設定項目が多く、初心者にはやや複雑
- おすすめ: デザインにこだわりたい方、自社HPを持っていない方
引用:SelectType
7. Googleカレンダー「予約スケジュール」:社内利用の基本

「システムを導入するほどでもない」「社内メンバーへの貸し出しがメイン」という場合は、Googleカレンダーの「予約スケジュール」機能(無料)が便利です。
予約枠を設定してURLを共有するだけで、相手に空き時間を提示し、予約を入れてもらうことができます。
決済機能はないため、社内利用や無料貸し出しに限定されます。
この「予約スケジュール機能」の具体的な設定手順や、活用する上での注意点については、別記事「Googleカレンダー 予約システム」で画像付きで完全解説しています。
導入を検討される方は必ずご確認ください。
- メリット: 完全無料、普段のカレンダーと同期
- デメリット: 決済不可、顧客管理不可、カスタマイズ不可
- おすすめ: 社内会議室の管理、身内への貸し出し、テスト運用
引用:Googleカレンダー
【独自解説】システムとセットで考える「スマートロック」の選び方
「無人運営」を目指す場合、予約システムと同じくらい重要なのが、物理的な「鍵」の仕組みです。
代表的な3つのタイプと、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
1. キーボックス(物理鍵)
| 仕組み | ダイヤル式の箱の中に物理鍵を入れておく、最もアナログな方法。 |
| メリット | 導入コストが数千円と圧倒的に安い。システム連携不要。 |
| デメリット | 暗証番号を変えない限り、過去の利用者が入れてしまうリスクがある。 |
| 推奨 | freee予約などの無料システムと組み合わせて、初期費用を抑えたい場合に最適。 |
2. Akerun(アケルン)などの「貼り付け型」スマートロック
| 仕組み | ドアのサムターン(鍵のつまみ)の上から両面テープで貼り付けるタイプ。 |
| メリット | 工事不要で賃貸でも導入しやすい。 |
| デメリット | 電池切れのリスクがある。Wi-Fi環境が必要。 |
| 推奨 | 賃貸物件で、STORES 予約やRESERVAなどの連携システムを使う場合。 |
3. RemoteLOCK(リモートロック)などの「工事型」スマートロック
| 仕組み | 既存の鍵を取り外し、ドアに穴を開けて設置する本格的な電子錠。 |
| メリット | Wi-Fi接続で、予約システムから発行されたPINコード(暗証番号)で解錠できる。物理的な耐久性が高く、手ぶらで解錠可能。 |
| デメリット | 導入コスト(機器+工事費)が高い。 |
| 推奨 | 本格的な貸し会議室ビジネスを行う場合。RESERVAなどの連携システムと相性抜群。 |
集客サイト(ポータル)と自社予約システムの「併用戦略」が最強
レンタルスペース運営で利益を最大化する秘訣は、「集客サイト(インスタベース等)」と「自社予約システム」の賢い使い分けにあります。
この戦略を知っているかどうかが、収益に大きな差を生みます。
手数料30%のポータルサイトに依存しないために
「インスタベース」や「スペースマーケット」などのポータルサイトは、圧倒的な集客力がありますが、売上の30%〜35%程度という高額な手数料が発生します。
これだけに頼っていると、手元に残る利益は少なくなってしまいます。
戦略の正解は、「新規はポータル、リピーターは自社」です。
リピーターを「手数料0円」の自社システムへ誘導する
初めてのお客様はポータルサイト経由で受け入れますが、一度利用してくれたお客様には、手数料のかからない(または決済手数料のみの)「自社予約システム(freee予約など)」経由での次回予約を促します。
具体的な誘導策
- 室内に「次回から使える自社予約限定の割引クーポン(QRコード)」を置く。
- サンクスメールで自社予約ページのURLを案内する。
- 自社予約の価格を、ポータルサイトより10%〜20%安く設定する(手数料分を還元)。
この戦略を実行するためには、ポータルサイトと自社サイトの予約在庫を自動調整する「Googleカレンダー連携機能」を持った予約システム(freee予約やupnowなど)を選ぶことが必須条件となります。
会議室・レンタルスペースの予約システムに関するQ&A
導入時によくある質問をまとめました。
Q. ダブルブッキングが心配です。本当に防げますか?
A. 「Googleカレンダー連携」機能があるシステムを選べば、ほぼ防げます。
自社予約システムに入った予約は即座にGoogleカレンダーに反映され、Googleカレンダーを通じてポータルサイト(インスタベース等)の在庫もブロックされるからです。
ただし、反映には数分のタイムラグがある場合もあるため、余裕を持った設定をおすすめします。
Q. 無人運営で、利用者が時間を守らない場合はどうすれば?
A. 予約時間の前後に「バッファ時間(準備時間)」を設けることで、多少の延長があっても次の利用者と鉢合わせるリスクを減らせます。
また、入退室ログが取れるスマートロックを導入していれば、超過利用に対して後から追加料金を請求することも可能です。
Q. 初期費用をかけずに始めるには?
A. まずは「キーボックス(数千円)」と「無料の予約システム(freee予約など)」の組み合わせが最強です。
予約確定メールにキーボックスの暗証番号を記載する運用であれば、システム利用料0円で、実質的な無人運営をスタートできます。
まとめ│まずは無料で「自動化」と「利益率アップ」の第一歩を

会議室やレンタルスペースの運営は、システム選び一つで「労働集約型の重労働」にも、「完全自動化されたスマートなビジネス」にもなり得ます。
初期投資を抑えたい個人オーナー様や、ポータルサイトの手数料に悩んでいる方は、freee予約(旧tol)のような、無料で始められ、Googleカレンダー連携も標準搭載しているシステムから導入してみることを強くおすすめします。
そして、運営が軌道に乗り、収益が安定してきたら、スマートロックとのAPI連携や有料プランへのアップグレードを検討し、さらなる効率化と売上アップを目指しましょう。
まずは「予約の電話やメール対応をなくす」こと。その小さな一歩が、あなたのビジネスの利益率を劇的に改善するきっかけになるはずです。








