「待合室の混雑で患者様からクレームが来る」「電話対応で施術が中断される」「自費メニューを増やしたいが管理が追いつかない」
整骨院・治療院の経営環境は厳しさを増しており、従来の「来るもの拒まず」のアナログ運営では限界が来ています。
解決策は「予約システム」の導入ですが、高額なレセコン連動型から無料アプリまで選択肢が多く、選び方に迷う先生も多いでしょう。
実は、自費診療の強化やコスト削減を目指すなら、あえて「汎用的な無料システム」を導入するのが正解のケースも多々あります。
本記事では、整骨院特有の「予約優先制」を成功させる運用術や、「保険・自費」のハイブリッド管理に最適なシステム8選を徹底比較。
あなたの院の規模と課題にマッチした、失敗しない選び方をプロが解説します。
なお、柔道整復師ではなく医師が診察を行う「整形外科」や「クリニック」の場合は、レセコンの仕様や法的な要件が異なります。
医科クリニック向けのシステム選びについては、以下の記事で詳しく解説しています。
目次
なぜ今、整骨院・治療院に「予約システム」の導入が急務なのか?

整骨院業界は今、大きな転換期を迎えています。
「療養費の改定(保険請求の厳格化)」や「競合過多」により、従来の「保険診療の回転率」だけに頼る経営スタイルが通用しなくなっているからです。
予約システムは、単なる「予約表のデジタル化」ではありません。
それは、「患者様の待ち時間」をなくし、「自費診療」への移行をスムーズにし、先生の「施術時間」を確保するための、最も強力な経営インフラです。
「予約優先制」による待ち時間解消と満足度向上
患者様が整骨院を変える(離脱する)最大の理由は「待ち時間の長さ」と「いつ呼ばれるか分からないストレス」です。
しかし、完全予約制にすると「ぎっくり腰」などの急患に対応できなくなります。
そこで主流となっているのが「予約優先制」です。
「基本は予約、空きがあれば当日もOK」という運用ですが、これを紙台帳やホワイトボードで管理するのは至難の業です。
「予約したのに待たされた」というクレームの原因にもなります。
予約システムを導入すれば、Web上で「予約枠」の空き状況を可視化できるため、患者様を分散させ、待合室の混雑を物理的に解消できます。
システム上で「1枠あたり何人まで」という定員管理を行うことで、無理のない予約コントロールが可能になります。
「自費診療(骨盤矯正・整体)」への移行と単価アップ
保険収入だけに頼る経営からの脱却を目指し、単価の高い「自費メニュー(骨盤矯正、EMS、パーソナルトレーニングなど)」を強化する院が増えています。
自費メニューは施術時間が長く、患者様も「時間を確保してしっかり診てほしい」と考えているため、確実な枠の確保(完全予約)が必要です。
予約システムを使えば、「保険診療は15分の並列枠、自費の矯正は45分の個室枠」といった複雑な時間の組み合わせを自動でパズルし、効率よく予約を埋めることができます。
また、Web予約のメニュー画面で、写真付きで自費メニューを魅力的に見せることで、予約率を高める効果もあります。
受付スタッフの負担軽減と「施術集中」
「施術中に電話が鳴る」ことは、施術者にとっても、リラックスしている患者様にとっても大きなストレスです。
また、受付スタッフを雇っている場合でも、電話対応や次回の予約確認に時間を取られ、本来すべき「患者様とのコミュニケーション」や「レセプト業務」がおろそかになりがちです。
予約システムでWeb予約比率を高めれば、電話の回数は激減します。
また、LINE連携機能を活用すれば、「明日の予約確認」や「来月の来院目安」を自動で送信できるため、スタッフが電話をかけたりハガキを書いたりする手間がゼロになります。
失敗しない!整骨院向けシステムの「4つの選定軸」

整骨院向けのシステムは、「何を実現したいか」によって選ぶべきツールが異なります。
高機能なものが必ずしも正解ではありません。以下の4つの軸で自院のニーズを整理しましょう。
「レセコン連携」は必要か?(特化型 vs 汎用型)
これが最大の分岐点です。
レセコン連携(特化型)
予約情報とレセコン(カルテ)を連動させたい場合、業界特化型のシステム(COCOPA、ハニースタイル等)が必要です。
新患登録の手間が省け、事務作業は楽になりますが、初期費用や月額費用が高額になる傾向があります。
連携不要(汎用型)
「予約は予約、カルテはカルテ」と割り切る、あるいは「自費メニューだけWeb予約にしたい」場合は、美容室やサロンでも使われる汎用型システム(freee予約、STORES予約等)がおすすめです。
初期費用0円、月額0円から導入でき、コストを圧倒的に安く抑えられます。
「予約優先制」に対応できる在庫設定
「完全予約制」ではなく「予約優先制」を敷く場合、システム側で柔軟な在庫設定ができるかが重要です。
例えば、「ベッドは5台あるが、Web予約で埋めるのは3台分までにして、残りの2台は急患(当日来院)用として空けておく」といった設定ができるシステムを選ばないと、予約でパンパンになり急患を断る事態になりかねません。
「リソース(設備)管理機能」や「予約枠の制限機能」があるかを確認しましょう。
「LINE公式アカウント」との連携機能
高齢者から若者まで、幅広い年齢層が来院する整骨院において、LINEは最強の連絡ツールです。
「LINEのリッチメニューからそのまま予約できる」「予約の前日にLINEでリマインド通知が届く」といった機能があるかは、リピート率と無断キャンセル防止に直結する最重要ポイントです。
アプリのダウンロードが不要な「LINE完結型」かどうかもチェックしましょう。
患者様のスマホに必ず入っている「LINE」を予約窓口にすることで、電話予約を減らし、リピート率(来院頻度)を高めることができます。
LINE連携に強いシステムの選び方や、そもそも整骨院経営におけるリピート率の目安と対策については、以下の記事でそれぞれ詳しく解説しています。
- LINE連携ツール: LINE 予約システム 無料|連携ツール徹底比較
- リピート率対策: 整体院のリピート率を上げる方法と平均目安
「回数券」と「サブスク」の管理機能
自費診療を強化する場合、回数券(プリペイド)や、月額定額制(サブスク・通い放題)の導入が鍵となります。
「紙の回数券」は、患者様が忘れたり、紛失したり、院側で残数を管理する手間がかかります。
システム上でデジタル回数券を販売・管理でき、予約時に自動で消化できる機能があれば、受付業務がスムーズになり、未収金トラブルも防げます。
自費診療の売上を安定させるには、回数券の導入が非常に効果的です。
どのようなメニューを回数券化すべきか、導入のメリットや注意点については、以下の記事で整骨院向けに詳しく解説しています。
- あわせて読みたい: 整体院に回数券を導入してみよう!【わかりやすく解説】
【2025年最新】整骨院・治療院におすすめの予約システム徹底比較8選
選定軸に基づき、整骨院に最適な予約システムを厳選しました。
「汎用・低コスト型」と「業界特化型」の2カテゴリで紹介します。
【汎用・低コスト型】自費移行・コスト削減・スマホ管理に最適
レセコン連携は不要で、とにかくコストを抑えて使いやすいシステムを入れたい院向けです。
特に自費メニューの強化に適しています。
ここからは、レセコン連携などの専門機能は持たないものの、圧倒的な低コストで導入でき、自費メニューの管理などに適した「汎用型」のシステムを紹介します。
なお、整骨院特化に限らず「全業種対応のシステム」をもっと幅広く比較検討したい方は、以下の記事も併せてご覧ください。
| サービス名 | freee予約(旧tol) | Square 予約 | STORES 予約 | Airリザーブ |
| イメージ | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
| 月額費用 | 0円~ | 0円~ | 0円~ | 0円~ |
| 無料プラン | あり | あり | あり | あり |
| 特徴 | スマホ完結 / 予約数無制限 / 自費メニューに最適 | キャンセル料徴収 / POSレジ無料 / 決済に強い | 回数券・月謝管理 / LINE連携 | リクルートID連携 / シンプルなカレンダー |
1. freee予約(旧tol):スマホで完結する個人院の味方
freee予約は、スマホアプリだけで予約サイト作成から顧客管理まで完結するシステムです。
最大の魅力は「手軽さ」と「無料範囲の広さ」。
予約件数無制限の無料プランがあり、「まずは自費の骨盤矯正だけネット予約を始めたい」というスモールスタートに最適です。
顧客メモ機能を使えば、施術の記録や患者様の特徴(痛みの箇所など)をスマホでサッと確認できます。
会計ソフトfreeeとの連携も可能で、個人事業主の院長先生の確定申告も楽になります。
推奨: 1人〜少人数の治療院、自費メニューのWeb予約化、コスト重視
2. Square 予約(スクエア予約):決済とキャンセル対策に

Square 予約は、決済サービス「Square」が提供するシステムです。
強みは「無断キャンセル対策」と「POSレジ」です。
無料プランでもキャンセル料の自動徴収設定が可能で、高単価な自費治療のドタキャンを防げます。
また、Squareの決済端末と連動したPOSレジが無料で使えるため、窓口での金銭授受や物販(サポーター、湿布等)の在庫管理もスマートになります。
推奨: 自費診療メインの院、無断キャンセルに悩む院、物販がある院
引用:Square 予約
自費診療は単価が高いため、直前の無断キャンセルは大きな痛手となります。予約時にクレジットカード情報を登録してもらうことで、抑止力になります。
個人院でも導入しやすいオンライン決済サービスの手数料や選び方については、こちらの記事も参考にしてください。
3. STORES 予約(ストアーズ予約):回数券とLINE活用に

STORES 予約は、「回数券」と「月謝(サブスク)」のデジタル管理に強いシステムです。
「骨盤矯正10回券」や「EMS通い放題プラン」などをオンラインで販売・管理できます。
LINE連携機能も標準で備えており、予約確認やリマインドをLINEで自動送信できるため、患者様の利便性が高く、電話問い合わせを減らせます。
推奨: 回数券・サブスクを導入したい院、LINE集客を強化したい院
引用:STORES 予約
4. Airリザーブ(エアリザーブ):シンプル操作で電話予約と併用

Airリザーブは、リクルートが提供するシンプルな予約システムです。
「自由受付タイプ」と「事前設定タイプ」が選べ、電話予約とネット予約を一元管理する「デジタル予約台帳」として優れています。
機能はシンプルですが、その分、ITが苦手なスタッフでも直感的に操作できるのがメリットです。
ホットペッパービューティーを利用している場合、ID連携などのメリットはありませんが、操作感が似ているため馴染みやすいでしょう。
推奨: 電話予約が多い院、シンプルな操作性を好む院
引用:Airリザーブ
【業界特化型】レセコン連携・多機能運用に最適
保険診療の効率化や、レセコンとの深い連携を重視する院向けです。
| サービス名 | ワンモアハンド | ハニースタイル | 三四郎くん | からだケア |
| イメージ | ![]() | ![]() | ||
| 特徴 | 業界導入数No.1 / キャンセル防止 / LINE連携 | 集客ポータル連携 / アプリ診察券 / 顧客分析 | レセコン一体型 / 請求業務効率化 / 訪問マッサージ対応 | 治療院特化 / 顧客管理・分析に強み / シンプル |
| レセコン連携 | ○ | ○ | ◎ (一体型) | × |
5. ワンモアハンド (OneMoreHand)

ワンモアハンドは、整骨院・鍼灸院・マッサージ院向けに特化した、業界最大級の予約システムです。
「予約のうっかり忘れ」を防ぐ自動リマインドメールや、直前キャンセルの防止機能が充実しています。
最大の特徴は、多くのレセコン(レセプトコンピュータ)と患者情報を連携できる点です。
予約が入ると患者情報が自動でマッチングされるため、受付業務の手間を大幅に削減できます。
LINE公式アカウントとの連携も標準で対応しており、集客から管理までをワンストップで行えます。
引用:ワンモアハンド
6. ハニースタイル(Honey-Style)

ハニースタイルは、予約システム機能だけでなく、整骨院検索ポータルサイトとも連動した「集客・予約・顧客管理」の一体型サービスです。
専用のスマホアプリが診察券代わりになり、患者様はアプリから簡単に予約やポイント確認ができます。
予約システム単体ではなく、新規集客のチャネルも増やしたい院におすすめです。
引用:ハニースタイル
7. 三四郎くん

三四郎くんは、予約システムというよりは「予約機能付きのレセコン」です。
レセプト発行機能と予約管理が完全に一体化しているため、情報の二重入力が一切発生しません。
特に訪問マッサージや訪問鍼灸など、外出先でのカルテ入力やスケジュール管理が必要な業態にも対応しています。
保険請求業務の効率化を最優先する場合の選択肢となります。
引用:三四郎くん
8. からだケア

からだケアは、鍼灸・整体・マッサージ院などに特化したクラウド型予約システムです。
レセコン連携はありませんが、治療院に特化した使いやすいUIと、詳細な顧客分析機能(リピート率分析、離脱率分析など)が強みです。
「どのメニューが人気か」「どの患者さんが離脱しそうか」を分析し、経営改善に活かしたい院に人気があります。
引用:からだケア
「予約優先制」を成功させるためのシステム設定術
システムを導入するだけでは、予約優先制はうまくいきません。
患者様に浸透させ、スムーズに運用するための設定とルールのコツを紹介します。
「Web予約枠」と「電話・当日枠」を意図的に分ける
予約システムの設定で、全てのベッド数をWeb予約に開放してはいけません。
例えば、ベッドが5台ある場合、Web予約の上限を「3枠(3人)」に設定します。残りの2枠は、システム上では「満席」に見えますが、実際には空いています。
この「余白」を作っておくことで、急な痛みを訴える新患や、電話予約の高齢者、当日来院の患者様を受け入れる余裕が生まれます。
LINEを活用して「Web予約」へ誘導する
電話予約を減らすためには、患者様のスマホに「予約への入り口」を作ることが重要です。
LINE公式アカウントのリッチメニューに「予約する」ボタンを設置し、そこから予約システム(freee予約など)へ飛ばす導線を作りましょう。
来院時に「LINEから予約すると便利ですよ」と一言添えて登録を促すだけで、Web予約率は飛躍的に向上します。
また、院内掲示やLINEだけでなく、近隣への「チラシ配り」も、新しい予約ルールの周知や新規集客には依然として有効です。Web予約へのQRコードを掲載するなど、効果的なチラシの作り方については、こちらの記事を参考にしてください。
- 参考記事: 整体院のチラシ集客|効果を上げる3つのポイント
自費メニューの「ネット予約限定キャンペーン」を行う
「自費診療を増やしたい」という場合は、予約システムを活用しましょう。
「Web予約限定!初回の骨盤矯正500円OFF」といったクーポンやメニューを作成し、システム経由での予約を優遇します。
これにより、患者様は自然とWeb予約を使うようになり、同時に自費メニューの体験者数も増やすことができます。
【応用編】問診票のデジタル化とMEO対策
予約システムと合わせて取り組むべき、整骨院のDX施策を2つ紹介します。
初診時の「WEB問診票(予診票)」活用
初診の患者様に、紙の問診票を書いてもらう時間はもったいないです。
freee予約の「追加質問機能」や、Googleフォームなどを活用し、来院前にスマホで問診を入力してもらいましょう。
「痛い場所」「いつから痛いか」「既往歴」などを事前に把握できれば、来院後すぐに施術に入ることができ、回転率が上がります。
Googleビジネスプロフィール(MEO)での集客
「近くの整骨院」を探す患者様は、Googleマップを使います。
Googleビジネスプロフィールに予約システムのURLを設定し、「予約」ボタンを表示させましょう。
地図で探して、そのまま予約できる導線を作ることで、新規患者様の取りこぼしを防げます。
「地域名+整骨院」で検索された際に、地図上で上位に表示される対策(MEO対策)は、チラシ配り以上に重要です。
予約システムと連携してMEO効果を高める方法や、具体的な対策については以下の記事で解説しています。
- あわせて読みたい: 店舗MEO対策の基礎知識と集客効果
まとめ│システムで「待ち時間」を減らし、患者様に選ばれる院へ

整骨院・治療院の経営において、予約システムは「受付業務の自動化」だけでなく、「患者満足度の向上」と「自費売上のアップ」を実現するための強力な武器です。
「待ち時間が長い」「電話が繋がらない」といった不満を解消し、スマートに予約・通院できる環境を整えることは、地域で選ばれ続けるための必須条件となりつつあります。
まずは、freee予約(旧tol)のような無料で始められるシステムを使って、一部のメニューや時間帯から「デジタル予約」を取り入れてみてください。
その便利さを実感できれば、先生もスタッフも、もう手書きの予約表には戻れなくなるはずです。
その他にも、開業・経営で失敗しやすいポイントや、差別化に役立つ資格など、整骨院経営のヒントとなる記事をご用意しています。
併せてご覧ください。
- 経営ノウハウ: 整体院の開業が失敗する理由と7つの対策
- 資格・差別化: 整体院開業におすすめの資格と開業パターン
空いた時間で、一人ひとりの患者様と向き合い、より良い治療を提供する。
そのための第一歩を踏み出しましょう。








